外野からの送球における投球速度を高めるための股割トレーニングの即時的効果

大学野球外野手において、外野からの送球動作の加速局面(踏込脚接地からリリースまで)以前のステップ幅が小さく、投球方向への勢いがないという特徴がみられました。

改善策として股割トレーニングプログラムを行い、加速局面の踏込脚膝の伸展や体幹の前屈姿勢が改善されました。

野球の動作には、投げる、打つ、走る、捕るなどがみられますが、「投げる」動作は野球を構成する上で重要な要素です。

「投げる」動作は、ポジションによって投球の手だてが異なります。

その中でも、投手以外のポジションの投球動作は、空間的・時間的に制約を受けた課題のもとで遂行しなければなりません。

特に外野手は、外野に打球が到達する場合などでは、捕球後にできるだけ早く内野手に送球して走者の進塁を防がなければなりません。

外野に打球が放たれた場合、外野手は走者を捕殺するために、ホームベースから約70m離れた地点から捕手に向かって投げなければならないことがあります。

その際、外野手は助走を用いることで勢いをつけ、送球動作を行わなければならないため、捕球した後に、(右投げの場合)右足に重心をかけることで送球体勢に入り、左足を投げる方向に踏み出すことが大切です。

さらに、強いボールを投げるには、右足で地面を蹴ることで腰をしっかりと回転させ、送球動作に従って、体重(身体重心)を前に移動させる必要があります。

これらのことから、外野からの送球においては、下肢によって助走に勢いをつける必要があり、大きな投球速度を獲得するには、投動作の主要な局面である加速局面以前に、助走を用いて準備する必要があると考えられます。

選手の送球動作は、加速局面以前の移動距離が小さく、投球方向への勢いがない特徴がみられた為、着眼点として投球動作の主要な局面である加速期前の準備の助走に着目し実験を行いました。

今回の実験では投球方向の前後方向への動きを強調した股割のトレーニングプログラムを行いました。

股割トレーニング(投球動作と同じ足幅に広げ、軸足側と踏込脚側に交互に身体重心を移動する)10回×3セット、股割トレーニング+投げ(股割と同じ方法で、軸脚で勢いよく蹴り移動する)10回×3セット、外野による送球を想定させてネットスロー(5m先のネットに投球)10球×1セットを行いました。

ネットスローは、トレーニングによる効果に慣れるために実施しています。

5球の平均速度では、股割トレーニング後の投球速度は、トレーニング前と比べると、約10km/h増大するという結果になりました。

投球動作についても変化が生じました。股割トレーニング後は、以前より右1歩目および2歩目において投球動作時の接地位置が増大しました。

また、トレーニング後における左足1歩目時の体幹は、トレーニング前よりも前傾しました。

そして、左足2歩目からボールリリースまでの加速局面において、トレーニング後はトレーニング前よりも踏込脚の膝関節が伸展しました。

外野手の送球動作では、助走を用い勢いをつけることが重要です。

外野からの送球は、捕球した後に、(右投げの場合)右足に重心をかけることで送球体勢に入り、左足を投げる方向に踏み出すことが大切です。

強い(速い)ボールを投げるためには、右足で地面を蹴ることで腰をしっかりと回転させ、投球動作に従って、体重(身体重心)を前に移動させる必要があります。

股割トレーニングによって、加速局面の踏込脚膝関節の伸展動作や体幹の前傾姿勢が改善し、このことが投球速度の向上に影響をもたらしたと考えられています。

股割トレーニングは、投球方向の前後方向への動きを強調するような特徴を持ち、投球する際は軸脚で勢いよく蹴り出しながら身体を前方へ移動し、膝関節の伸展動作と体幹の前傾動作を行いながらボールがリリースが可能となることが示唆されました。

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