オーバーハンドスローとスリークォータースローについて

野球の投球動作は大きく分けて、上手投げ、横手投げ、下手投げの3投法がある。

特に投手のピッチング動作においては、上手投げはさらにオーバーハンドスロー(OH投法)とスリークォータースロー(TQ投法)との2つに細分して呼ばれ、横手投げはサイドハンドスロー、下手投げはアンダーハンドスロー(またはサブマリンスロー)と呼ばれている(Ryan and Torre、1977:松井、1981:桜井、1992)。

これらの投法のなかでも、特にOH投法とTQ投法を厳密に規定し類別することは困難であるが、一般的には各投法は、ボールを投げ出す(リリース)瞬間の投球腕の姿勢つまり肩を基点とした肘の位置を基準に類別されている(宮西、1999)。

すなわち、

OH投法は、投球腕の肘の位置を肩よりも大きく上げて、鉛直線からおよそ3/4の範囲内でリリースする投法であり、

TQ投法は、OH 投法よりも肘の位置を下げて、およそ3/4の位置でリリースする投法であるとされる。

また、サイドハンドスローは、肘と肩の高さレベルがほぼ同じで、アンダーハンドスローは、肘の位置を肩よりも大きく下げてリリースする投法であるとされる。

ただし、いずれの投法も、リリース時の投球腕肩関節内外転角はほぼ90°位となるので (Feltner and Dapena 、1986:桜井ほか、1990:宮西ほか1995)、各投法の主たる決定要因は、体幹に対する投球腕の動きではなく、体幹自体の非投球腕側への倒し込み動作にあると言われている(Atwater,1979)。

これらの投法のうち、OH 投法とTQ 投法を用いる上手投げの投手に投球スピード(「球速」)の大きい速球投手が多く(松井,1981)、なかでも、TQ投法を用いる投手に球速のより大きな投手が多く観察されるようである。

日米のプロ野球を代表する現役・往年の投手を各投法で分類したものであるが, TQ 投法を用いる投手に球速のより大きな投手が見受けられる。

■オーバーハンドスロー

野茂英雄、佐々木主浩、桑田真澄、三浦大輔、松坂大輔、黒木知宏、他

■スリークォ-タースロー

江夏豊、村山実、稲尾和久、工藤公康、上原浩治、N.ライアン、Mクルーン、他

■サイドハンドスロー

高津臣吾、斉藤雅樹、塩崎哲也、他

■アンダーハンドスロー

渡辺俊介、山田久志、足立光宏、小林繁、他

米国大リーグ投手において時速160km前後の極めて大きな速度(スピードガン計測)でボールを投げ出すことのできる投手が見られる(例:N.ライアン、R.ジョンソン)。

このように各投法と球速の大小を関連付けて見ると、OH 投法とTQ投法間ないしは、日本人投手と大リーグ投手間に伺い知れる明確な球速差は、ピッチング動作(技術)つまり投法の違いが大きく関与しているものと推察されている。

TQ投法は肩内旋角度がさらに大きく、肘伸展速度のそれはさらに小さくなるものと推察されている。

一方、OH投法ではその逆のことが推察されている。

TQ投法はOH投法よりも、球速を増加させるために効果的だと言われているが、リリース高が低くなるため、下向きの投射角の大きい直球や、落差の大きいカーブボールやフォークボール等の変化球を投げるには効果的ではないと考えられている。

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